2012年08月25日 アーカイブ

 第3回数学科リレー講座「複素数の世界」6日目

リレー講座の最終日。6日目の今日は「オイラーの公式」と「代数学の基本定理」の2本立てで盛りだくさんです。どちらのテーマも厳密に話を進めていくのは高校生でも大変なことなので、定理の内容の紹介と、その意味するところを感じ取ってもらうことを目標としました。
オイラーの公式とは「e^iπ = -1」というものです。数年前「博士の愛した数式」という小説や映画でも取り上げられ、割とよく知られている公式です。自然対数の底e、円周率π、虚数単位i、そしてマイナスが付いていますが、数の基本である1。これらが結びつき簡潔な式にまとまっているところに、美しさを感じ惹かれてしまいます。ですが、見た目には簡潔な式ですが、いざ、この式が表すことを説明しようとするとものすごく大変なことで、しかも、複素数に触れたのが5日前!という中学生に対しては、何を強調して伝えればいいか悩むところでした。(これはもう1つのテーマの代数学の基本定理でも同じです。)
まず、指数法則を複素数まで拡張していくとき、e^iθをどのように定義すればよいのかがポイントであることを強調して、e^iθのもっている指数法則が3日目のド・モアブルの定理によく似ていることに気づいてもらいます。そして、e^iθ = cosθ+i sinθ であることを実感する、という流れで行いました(写真1)。
e^iθ = cosθ+i sinθという関係式を認めてしまえば、オイラーの公式は単にθ=πと代入しただけなのですが、実は、この関係式は2つめのテーマの代数学の基本定理の話にも登場します。
代数学の基本定理とは「n次方程式は必ず複素数に解をもつ」というものです。1次方程式を習ったばかりの中学1年生では何がスゴイ定理なのかわかりにくいかもしれませんが、2次方程式を実数の範囲で考えると解なしの可能性があることを知っていれば、その意味も見えてくると思います。方程式 f(z)=0 が解をもつ、ということを実感することをメインにしたので、実際に複素平面上で関数 w=f(z) がどのような振る舞いをするのかをパソコンを使って見てもらいました(写真2)。
変数zが半径rの円(写真では黄色い線)を動くときに、関数の値w=f(z)がどのような図形(写真では赤い線)を動くのかを、さまざまなrに対して観察し、w=0となる、つまり、赤い線が原点を通るようなrが必ずあることの雰囲気を感じました(写真3)。
また、関数f(z)が2次式のときは値の赤い線はクルクルっと2回転、3次式のときはクルクルクルっと3回転するのですが、その理由を e^iθ を用いて説明して、今日の講座を終了しました(写真4)。
(小澤 嘉康)


(写真1)


(写真2)


(写真3)


(写真4)

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 第3回数学科リレー講座「複素数の世界」5日目

リレー講座もいよいよ、終盤戦。五日目の今日は編集子の川崎が担当致しました。
今日のテーマはリーマン面。これはその名が示すように、数学史上の大立者であるBリーマンの天才により与えられた概念です。
まずは、昨日、平山先生から紹介のあったzの複素関数のバトンを受けて、w=z^2が、w=z^(1/2)になってもやはりzの関数なのか?を問題提起。結果、zの関数とはならない(写真1)ものの、そこで「切り捨てることなく」、なんとか関数として「認め、活かす」方法はないか?と考えた末に出てきたであろうリーマンの天才と偉大な精神による卓抜なアイデアを紹介(写真2)。
そして、立体射影により、球面上の北極以外の点をひとつとると、それは必ず複素数平面上のひとつの点に対応すること、および北極は、昨日登場した仮想の「無限遠点」に対応することにすれば、複素数平面は球面と「ある意味で」同じとみなしてよいことを解説しました。
後半は、その「ある意味」とはなにか?を探求。まずは、事物の「ほどよい」分類の基準とはなにか?を考察し、今回は立体の場合についてのほどよい分類の基準とは何かを考えました。「面の数による分類」は強力、と思いきや曲面に関しては無力。さて、どうするか?との問題提起から、その一解答は「同相」にあることを解説。穴空きの多面体にも適用できるよう、一般的なオイラーの多面体定理を紹介し、穴の1つあいた多面体に対して定理を適用しました(写真3)。はてさて、同相の考え方は納得されたでしょうか。ここで、今日の前半の話題を合流させ、w=z^(1/2)の(コンパクト化された)リーマン面が球面に同相であることを示し(写真4)、これ以外の数式で表されたリーマン面が、一体、いくつの穴があいた曲面に同相になるのかという問に答える、いわゆる「リーマン・フルヴィッツの公式」を紹介し、実際に受講者と共に、穴の数を計算してこの日を終えました。
また、授業後は多くの生徒が教室に残って“位相談義”に花を咲かせていました。また、各自で持参した粘土でトーラスに同相なコーヒーカップを作ったり、実際に球面の三角形分割をしてオイラーの多面体定理を確かめていました(写真5)。
なにかと話題沢山となったこの日ですが、受講者の皆さんが思いを馳せる話題はあったでしょうか。わたくしは、リーマン面のアイデアに至ったリーマン博士の精神に、心を熱くするものを感じており、生涯に渡り留めておきたいと切に思います。
さて、明日はいよいよアンカーの登場です。ご期待ください。                (数学科)


(写真1)


(写真2)


(写真3)


(写真4)


(写真5)


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