校長のメッセージ

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和田 征士

平成17年7月1日

《  最先端技術は手作り 免震校舎その2 》

校長のメッセージの前号(61号)で、現在本校が工事を進めている校舎新築工事について「免震ゴム」を上乗せ部分と、旧建物部分の間に取り付けるのは日本で初めてと書きました。

その為に建築確認申請は、通常、区役所の窓口に審査の書類を提出すれば、建築確認が得られますが、日本で初めて採用する構造・工法なので、大臣許可まで格上げされた手続きが取られたことは前号でお知らせしました。簡単に言うと、最先端の構造・工法と言うことになります。工事概要については、本ホームページをご覧下さい。

ここで触れたかったのは、この工事に使用される「免震ゴム」の製法についてであります。

校舎設計を依頼した前川建築設計事務所及び校舎建設を依頼しています竹中工務店を通じ、免震ゴム製造の依頼を受けたのは、(株)ブリヂストン横浜工場です。先日、本校校舎に取り付ける免震ゴムの「性能検査」に立ち会うために、工場に出向きました。

下の旧校舎と上に載せる新校舎の繋ぎ目の部分、22カ所に取り付けることになる免震ゴムの一つの大きさは、円筒形をしており、直径60センチ、高さ34センチメートル、重さ600キログラムです。この免震ゴムの特性は、垂直方向の縮みは、ほとんど無いのに、水平方向の力に対しては、写真のように歪みますが、加える力が無くなると、元の形に戻ることにあります。それによって、地震で揺れた場合に、このゴムによって揺れを吸収することになります。

ここで話題にしたいのは、その免震ゴムの製法についてです。上記のように、製品ゴムの高さは、34センチメートルですが、内部はゴムと鋼板の積層構造になっています。一層のゴムの厚さ約4ミリ、鋼板の厚さ約3ミリ、ゴムと鋼板の間に接着剤を入れ、相互に重ねた層構造をしています。ゴム層の総数は41層です。この作業を機械でなく人力で全て行います。機械ではこれがうまき行かないという説明でした。最先端の技術だから複雑な機械を使ってオートメーションで作っていくとばかり想像していました。
  実際はそうではなくて、熟練した工員の人が経験と感覚を働かせて、作る方が望ましい製品が出来上がるとのことです。

まさに手作りそのものです。

原料のゴムは、天然ゴムを使うとのこと、熱帯のゴムの木から採集されるあのゴムです。それに炭素を加えて熱して作られます。その為黒色をしています。

手作りについては、20万トン級以上のタンカーでも、そのスクリューは、手作りであるとどこかで読んだ記憶があります。また、有名な超大型天体望遠鏡も、そのレンズは手で磨いて仕上げをしたと聞いています。意外に手作りの製品が多いことに気付きます。世の中はどんどんと工業化が進んでいるように思いますが、研ぎ澄まされた人間の感覚がまだ上を行っていることに、日本の将来の展望に一つの光を与えてくれるようにも思います。

それは私だけの感覚でしょうか。