校長のメッセージ

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和田 征士 平成16年5月7日
《 トフル講習開始 》

トフルって何

 英語の実用能力の検定につきましては、日本では「英検」が主流であります。英検で取得した「級」によって、英語の実用能力がある程度判断できるとされています。その為国内に広く英検受験の雰囲気が行き届いています。
  本校でも中学校の内に、英検準2級まで取得するよう働きかけが行われています。中学校に入学すれば、先ず3級にチャレンジすることから始まります。中学校時代に多くの人が目標を達成しています。

 国内にいる限りでは、上のような構図でもの足りています。しかし、外国に留学するとか、英語を使ったビジネスを行うなどの段階になりますと、英検ではなく、別の物差しが使われます。
  一番使われる物差しは、「トフル」だと思います。英検は習熟度の
度合いを、「級」で表示しますが、「トフル」では、点数で表します。例えば、アメリカの大学で授業を受けて差し支えない程度に英語を「聴く・話せる」ためには、トフルの点数で、580点から600点は欲しいところである。といった使い方がされます。この点数は大学の難易度によって上下するようです。
  年に何回か実施されるトフルの検定試験において、試験結果の点数がどのくらいになったか、点数表示になります。これは、我が国で実施している大学入試の「センター試験」の結果表示と似ています。××点とれていれば○○大学△△学部は大丈夫など、得点が標準化してあり、実力が上がれば、上位の点が取れるようになっています。

 本校では、このトフル受験対策をを導入することにしました。4月19日から、始まった1学期の「講習」の一つと位置づけて既に授業が始まっています。
  「講習」は、毎日放課後、80分を1単位時間として行います。講習は予め指定した日から一斉に始まります。始まる日の前までに、予め講習を実施する先生が、実施日・講座内容・テキストの種類・講座担当者名・実施場所・対象学年・定員などを決めます。担当の部でそれらをまとめて表示した一覧表を作成し、生徒に配られます。
  生徒の希望者が申し込みをするようになっています。
  こうした「講習」が学期毎に募集・実施を進めていきます。夏休みも行われますので、年間で、4回の講習区分があることになります。
  1学期の講習は、全7回になります。中間や期末考査の時は外しますから、一学期の間に行われる回数を拾うとこうなります。
  今学期実施される講習の総数は33です。

 もう少し詳しく

 今回始めたトフル講習は、受講指定の学年は「オープン」でありまして、学年指定ではありませんが、タイトルを
「Toefl受験者向けリスニング養成講座」としてあります。資格を持つネイティブ スピーカーに講座を担当して頂き、既にトフルを受験したことのある生徒や、トフルを知っている生徒を対象にして、実力アップを目指した講座です。狙いが限定的ですから、受講者はそれほど多くはありませんが、見込みどおりの滑り出しと考えています。
  今後、この講習のことが校内に浸透して行くに従って受講希望者が増えていくものと考えています。

今年3月に本校高3を卒業した生徒で、アメリカの私立大2校を既に決めていて、プリンストン大の結果待ちの生徒がおりました。最近プリンストン大についてもう少し待つよう連絡が来たと聞きましたが、既に決めた2大学の手続き期限が迫っていて、どの大学に行くか決断を迫られているようであります。こういう状況の生徒もおりますし、在校生では、今回のトフル受講生の中にも、直接アメリカの大学を目指す希望の生徒がいます。そのような目標を持つ生徒にとっては、学校がこういうことを始めたことに好感を持っているようです。

 学校としては、どのような課題に対しても需要があれば、できる限り応じていきたいというのが基本的なスタンスであります。
  今回のトフル講座もその一環であります。
  高卒で外国の大学を目指すというのは、推奨すべきことではないと私は考えています。ただ、世界の大学教育事情に詳しい人が日本と外国を比較すれば、日本の大学がもっと改善すべき事項が幾つかあるという指摘には頷けるものがあります。その内容を一言で言うと、大学生になったら、もっと力がつくよう、大学側がカリキュラムの面や、指導者の面でもっと工夫する必要があります。高校生やその保護者に、日本の大学で充分に実力を養えると判断できるような魅力を、新たに創出する必要があるのではかかろうか。平成16年度から、国立大学が法人化して、私立大学と競合する形になりました。この機会を捉えて、改革が進むことを期待していますが、今流れてくる改革の内容を見る限り期待に応えているとは思えない状態であります。大学改革への一層の取り組みを期待するところです。

 言語の修得に関する私の考え

 世の中は、通信手段の向上や、移動手段の飛躍的向上により、世界は一層狭くなり、各国間の交流がますます深まって行くであろうことは誰の目にも明らかです。その中でコミュニケーション能力の向上は極めて大事な要素です。特別な立場の人でなくても、第2或いは第3外国語によるコミュニケーション能力が必要になってくると思われます。
  このような見通しの中で、私たちが一番心掛けなければならないことは、自分たちの国語の能力を先ず確固としたものにする必要があります。自国語の能力の見通しが立った時点以降、速やかに第2或いは第3外国語の能力習得に向かうことが必要です。その分岐点は12歳か13歳ころではないかと思います。論理的思考が整ってきているかが一つの目安になるのではないか。一つの言語には言語自体の体系と、普通に文化と呼ばれる思考の体系がそれぞれ独自なものがあり、個々のアイデンティティーは、そういうものの中で醸成されていくものと考えるからです。自国語を自由に操れる力が備わって初めて外国語の能力習得が行われることが重要だと考えます。
  外国語会話能力習得の好適年齢が存在することは確かです。それは何歳ころになるのでしょうか。

 現在我が国では、中小企業の中で、世界でこの会社しか製造してないあるものを制作していて、その会社には外国からどんどん引き合いがくるような会社があると聞いています。我が国の優秀な人材を日本の大学が責任を持って受け入れ、育成し、国内でその人材が満足できる環境を整えて活躍できるように取りはからう。そして、そのエキスパートのところに外国からの訪問者が集まるような社会の構築を目指すことが大切です。そのような国のあり方に惹かれます。これを国を挙げて取り組むことが必要ではないでしょうか。
  地方分権の教育特区の一つに、小学校で英語教育のイマージョン教育に取り組み始めたところがあると報じられています。イマージョンとは、英語づけの教育のことと思いますが、教える人は英語を母国語とする外国人が趣旨にあっていると思います。子どもたちに接する人が皆外国人だとして、人間形成に関わる分野はどう扱うのでしょうか。アイデンティティーの基礎づくりの時に本当に、外国人に子どもを託せるのか。
  家庭の中でバイリンガルを指向するのとは全く違っていると考えて方が適切ではないかと思います。
  小学校で外国人による英語づけが行われるのであれば、家庭の枠割りを綿密に位置づけ、それを実施する手だてを講ずる必要があると思われます。試みとしては肯定されても良いかも知れませんが、上に挙げたような考え方との整合性についてもっと議論が成されてから着手すべきではないでしょうか。