校長のメッセージ  23 和田 征士 平成15年 7月19日

《 進路講演会ー文系にするか理系にするか 》

 一学期の期末考査の後の自宅学習期間を利用して高等学校1年生を対象にした進路講演会が行われました。
 高1生対象ですが、他の学年や、保護者にも案内され、多数が参加する中で始められました。
 講師は二人の大学の先生に来ていただきました。
早稲田大学法学部教授・法科大学院開設準備委員長
  浦川 道太郎先生
東京大学教授 大学院農学生命科学研究所 生化学研究室
  塩田 邦郎 先生 

文化系・理科系の先生お一人ずつになります。
 本校では、高校二年から文化系か理科系に分かれるコース制をとっています。高校一年生は二年生に進むに当たってどちらかを選ぶことになっています。例年六割くらいの生徒が理科系を選んでいます。今年の一年生はこれからどちらを選択するか二学期の間に決める必要があります。

 法科大学院
 先ず浦川先生は、法科大学院の開設準備委員長の立場から法科大学院の位置づけや性格についての説明がありました。
 法科大学院の最大の特徴は、これまで「司法試験」を受験する一般的なコースは、大学法学部を卒業するか、司法試験の受験のための専門学校で学ぶかして、司法試験に備えていました。ところが今度法科大学院ができると、法科大学院卒業生でなければ司法試験が受けられなくなります。法科大学院の入学資格は、何の学部卒でも受験資格があり、法律の知識は入学時は必要ないとのことです。法科大学院在学中の三年間に法律の知識を身につけることになります。

 どうしてこういう改革を行うかというと、近年訴訟の内容が高度化し、例えば、航空機の事故の訴訟であれば、航空機の構造や性能に関する専門的な知識が求められます。しかしこれまでの弁護士や検事・判事は、文系出身ですから、その方面の知識は高くないのが一般的でした。
 そこで法科大学院は、文系大学(法科は勿論、経済・商など)卒業者は勿論のこと、理系・工学系・薬学系・医学系の卒業者も入学して、法律を学び、司法試験に臨むことになります。
 このようにして、法科大学院制度が完成しますと、航空機に強い弁護士、薬剤事故の訴訟に強い検事などが誕生することになります。それによって国際間の係争にも対応しやすい体制になるとのことです。
 この法科大学院への移行は、早稲田大だけでなく、日本の制度として全国で行われることになります。
 早い大学は来年度から法科大学院を立ち上げると報道されています。

 ヒトDNAの解析
 一方、塩田先生の講演は、塩田先生の研究室に所属した本校卒業生平成3年卒の今村拓也君は、本校在学時担任は平山先生・内堀先生であったことや、塩田先生の研究室を出て現在パリのジャック モノー研究所でヒトDNAによる形質発現について研究のために留学している様子が映像によって紹介されました。
 続いて塩田先生のご専門であるヒトDNAによって、形質が発現する仕組みについてお話がありました。クローン牛やクローンマウスなどのことも織り交ぜて話がありましたが、この部分は内容的に超高校級ですから、高一生は全部を理解できなかったかも知れません。
 でも、パワーポイントを使った説明で、理解しやすく話してくださったのが印象的でした。

 文系か理系か
 両先生が奇しくも共通しておっしゃったことは、これまで文系・理系が違うということを必要以上に強調されていることだとのご指摘がありました。
 浦川先生は、法科大学院を立ち上げる立場か、ひとりの人間が航空機やパイロットの資格があり、航空工学や航空力学の専門知識を身につけた弁護士の資格を取得してヒトが今、法曹界には必要だとおっしゃっていました。これはひとつの例で、文系理系を併せ持った能力が今後より一層求められるようになるということでした。
 一方の塩田先生は、本欄の「校長メッセージ20・平成15年6月16日号」をご覧頂いたとのことで、経済学部卒から、日本航空の国際線パイロットになった本校卒業生の記事のように、人間は本来文系・理系の両方の能力を持っていて、いろんな分野に興味を持つことが大切であると強調されていました。

 本校カリキュラムの特長
 本校のカリキュラムの特長は、高校2年から文系・理系に分かれますが、履修単位数はどちらを選択してもほぼ同じになっています。従って文系コースを選んでも理科の授業を受けて単位を取ることになります。他校と大きく違うところのひとつです。一見、効率が悪く無駄な努力をすることになると思われ勝ちですが、総合的な力が備わることで、将来必ず役に立つはずと考えています。大学の先生がこのことの大事さを指摘してくださったことは、心強い限りだと思いました。