第9回 学校1年 英語 内田 玄司先生

       楽しみながら学ぶ英語


内田写真

内田 玄司先生

プロフィール

昭和37年生

本校教諭
本校卒業

中学1年補佐

クラブ顧問 弓道部


校長が見た 海城の英語授業
 

 公立中学校では、学習指導要領により、英語の授業時間は週3時間、年間105時間 と定められています。一方本校では、日本人教師が担当する「英語」を週5時間、ネイテ ィブ・スピーカーが担当する「英会話」を週1時間、計6時間英語の授業を実施していま す。土曜日に授業を行うなど私立学校の利点を大いに生かして生み出されたこの増加時間 を十分に活用して、「聞く、話す、読む、書く」の4分野を総合的に学習し、基礎力の定 着を図っています。
  本校中学校の英語では、「基礎学力を確実に身につけさせる」ことを狙って授業を進め ています。消化不良の状態で高校分野まで手を伸ばすような、極端な「先取り」は行わず、 中学の間は特に基礎力を十分に養成することを重視しています。長い目で見ればこの方が より生徒の力が伸びると考えているからです。
  正規の授業以外にも必要に応じて講習を実施していますが、これについては別項「校長 のメッセージ」欄で触れています。

 

 
授業づくりのねらい
 

 中学校1年生の授業を展開するにあたり、内田先生が一番気をつけていることは、英語 を初めて学習する生徒たちが、「英語を好きになるように、楽しく」授業をすることだそ うです。基礎的な内容がしっかり身につくように心がけてもいるそうです。英語の勉強を 楽しくするには、授業で行う個々の活動それ自体が面白いことはもとより、生徒一人一人 の「わかった」「できた」という実感を大切にしたい。わかってこそ、できてこそ楽しく なると思う、とにこにこして言っておられたのが印象的です。
  今回の授業も変化に富んでいて生徒を飽きさせないものでした。いくつもの異なる活動 をテンポよく展開していくのに役立っていたのが、授業中に配布された数種類の独自プリ ントです。プリントはほぼ毎時間その都度何枚か配られているようで、4月からの累計は 100枚を優に超えるそうです。今回はまず授業の冒頭で、前回学習した内容の復習テス トを独自のプリントでおこないました。2枚目は本時に学習した英語を使ったクイズ形式 の聞き取り練習のプリントです。3枚目はその英語を使って、今度は自分の言葉で表現す る練習のためのものです。4枚目は発展的な英作文に挑戦するための宿題プリントです。 教科書、ワークブックに加えてこれらのプリントを全て同時に配るのではなく、授業中の 適時に使うことで、メリハリのあるテンポのよい授業が展開されていました。生徒たちも 次々に繰り出される課題に楽しそうに取り組んでいました。
  もう一つ驚いたのは、生徒たちが速い授業展開に遅れずについていっていることでした。 あとで内田先生から聞いたところによると、先生は授業をできるだけ一定のパターンに沿 って進めているそうです。そうすることにより、生徒たちは次に何が来るか、ある程度予 測しながら授業を受けられるのだそうです。生徒が安心して授業を受けられるようにする ことで、楽しく中身の濃い授業が可能になると言っていました。

 
 
授業の進め方

11月19日(土)中学校1年1組の3時限目の授業は10時35分に始まりました。挨拶は起立して行われました。続いて今日は校長先生が授業を見学にきていることが紹介されました。教室の後方にいる私の方に身体を向け直して一斉に大きな声で挨拶してくれました。その間先生も生徒も全部英語です。その後の授業も先生は英語を使って行います。日本語はわかりにくい部分・初めて出てくる英単語の日本語の意味を言うだけです。そのことにびっくりしました。私の受けた英語の授業のイメージと全く違うからです。生徒は半年そこそこでもうここまできているのかと正直驚きました。
  その後着席して、まず教科書を出しました。開いた部分は教科書の「ニュークラウン」2年用の3ページ目です。その部分を先生が一文ずつ朗読し、後に続いて生徒が大きな声で復唱する形です。みんなの声に力が漲っていることが伝わってきます。
  続いて上に記したように一枚目のプリントが配られ、本も何も見ないでのテストの形です。3分過ぎると記入を終わって、教科書のその部分を開き、正解なら赤丸を打つ自己採点です。
  次は、教科書に準拠した副教材「キーワーク英語」について前時間の終わりに指定しておいた宿題部分の答え合わせを行いました。ひとつひとつの問いに生徒が指名され答えを発表しました。宿題は全員がやってきていることが前提になっているようでそのとき指名された生徒16〜17人の中で答えられなかった生徒はいませんでした。
  ここまでの作業で時刻は10:46、授業が始まってから11分経過しています。教科書、プリント、副教材の三種類を使い、変化に富んだテンポの速い授業です。
  次は英語の歌の合唱です。あらかじめ配ってあった英文の歌詞を印刷した用紙を生徒は出しました。全員が起立して大きな声で合唱しました。曲は、NHKで放映されていた「セサミストリート」の主題歌です。この曲は2週あまり毎時間続け、この日で終わりにし、来週は別の曲になることが伝えられました。この合唱の時間は3分。場面としては、適切な気分転換になり、いい息抜きだと思いました。
  次はまず内田先生が下のような英文を板書されました。

      I lived in Canada.
+)  I played ice hockey then.
     When I lived in Canada, I played ice hockey
   〜するとき

  2文を1文にまとめる場合の When の使い方についての説明がありました。
  10:54 「キーワーク英語」10ページを開きそこにある問題の1と2の設問について答えを記入するよう指示がありました。そこには、When の使い方の練習問題文あります。作業は1分程度で指名された生徒が答えを発表しました。正解した生徒に手を挙げさせたところ、全員が手を挙げました。また、生徒が解答を記入している間は先生が机間巡視をして生徒の進み具合を丁寧に見ていました 。

  10:56 プリント2の配布がありました。両側に5個ずつ並んだ絵があります。それぞれの絵は何かの動作が描かれています。生徒はWhenを含む英語の音声文を聞いて左右の絵の関連するもの同士を線で結びます。作業は遊びのように見えますが、話している英語の内容が聴き取れることが条件になります。また、指名された生徒が答えを発表します。全問正解の人は手を挙げるよう指示したところ、ほぼ全員が挙げていました。

  11:00 3枚目のプリントが配られました。プリントの左側にはWhen I am happy, When I am sad, When I am angry, When I am tired,の4つの例が、右側にはI talk with my friends. I listen to music. など10個の例が印刷されています。それぞれの発音と意味を確認した後、生徒たちは自分の場合に当てはめて、左右を線で結ぶように指示されました。作業が終わった頃を見計らって、先生がWhat do you do when you are happy?と質問し、指名された生徒が自分の答えを発表します。angry, sad, tiredについても同様におこないました。どの生徒もはきはきと答えていました。

 11:05 今度は生徒同士がペアになって、同じ質問と答えをやりとりします。生徒たちは喜々としてこの活動に取り組んでいました。終わった頃を見計らって今度はみんなに静かにしてもらい、先生が一人の生徒を指名して、Kenji, what does Yuta do when he is happy? と質問し、指名された生徒に自分のパートナーについて答えさせました。今練習したことを、ほんの少し変えて使う応用問題です。angry, sad, tired についても同様の質問をしましたが、指名された生徒はみなほぼ正確に答えました。

 11:10 今日新しく学習する語句の導入です。単語を書いた大きなカードを生徒に見せながら、一つずつ意味と発音を確認していきます。途中、sometimesという単語が出てきたときに、「NHKの『基礎英語』を聴く頻度はevery dayかusuallyかsometimesか」と英語で質問して生徒に挙手で答えさせていました。単語を文脈の中で使うことで、より強く印象づけようという意図がうかがえます。一通り導入した後で、もう一度カードを順に示して生徒に発音させ、さらにもう一度同じことを繰り返しました。生徒たちは大きな声で発音していました。

 11:12 次に教科書の本日学習する部分の朗読をテープで流し、生徒は教科書を閉じてそれを聴きます。テープが終わると、今聴いた内容について先生が英語で質問し、指名された生徒がそれに英語で答えます。指名された4人の生徒全員が、ほぼ正確な答えを返していました。

 11:14 次に教科書の4ページを開かせ、もう一度テープを聴かせた後、その意味を今度は日本語で確認します。あらかじめノートに書かせてあった和訳を生徒に発表させ、先生が補足説明をし、必要に応じてノートに書き込むように指示していました。

 11:17 ここで生徒は全員起立し、テープの音声に続いて教科書の英文を音読しました。次に今度は教科書を見ないで、先生の後について暗唱します。音声に注意を集中させることと、英文を頭の中に定着させることを意図していると思われます。

 11:20 今日学習した教科書の英文を、ノートに筆記させました。その間に今日の宿題となる「キーワーク」のページを黒板に書き、次に4枚目のプリントを渡しました。来週の木曜までの宿題だと言うと、詳しくやり方を説明しなくても、生徒たちはこのプリントをどのようにやったらいいか分かっているようでした。

 以上で授業が終了です。最後に内田先生は黒板にTake care.と書いて、これは「お大事に」という意味だと説明しました。すると生徒ははっと気づいたようで、終わりの挨拶の後で先生に向かって「Take care!」と声をそろえて言いました。実は先生はこの時間の始まるとき、マスクをして教室に現れたのでした。始めのときと同じように校長にも英語で挨拶してくれました。お陰で大変いい気持ちで教室を後にすることになりました。

 11:25終了(50分授業)

授業者のコメント

 英語を初めて学ぶ中学1年生を教えるときに私が最も重視するのは、英語学習に対して前向きな姿勢を育てることです。英語を好きにさせること、最低でも嫌いにさせないことが、中1担当者に課せられた最大の責任であると私は思っています。この目標を実現する第一歩として、中1の英語の授業は、なにはともあれ楽しくなければならないと私は考えます。つまらないと感じたものに対して積極的に取り組めないのは、大人も子供も同じです。もちろん、英語の授業ですから、英語の基礎的な知識とその運用力を確実に身につけさせることは必須です。ですから、現在私が目指しているのは、いささかありきたりですが、「楽しくて力がつく授業」、ということになります。
  「楽しくて力がつく授業」をするために、私は次のことを心がけています。
  第一に心がけているのが、テンポとバラエティということです。「聞く、話す、読む、書く」の4技能をバランスよく身につけるためには、多種多様な活動をおこなうのが効果的です。また、これらを組み合わせてテンポよく授業を進めることで、生徒たちを飽きさせないようにしています。
  第二に、授業で学んだことをさまざまな角度から実際に使う場面を多く作るようにしています。外国語学習に不可欠な反復練習の機会を与えると同時に、「できた」という実感を生徒が持てるようにするためです。学んだことを実際に使うことができたという達成感が、さらに学びたいという気持ちを引き起こす。この循環を作ることができれば、学力はおのずとついてきます。
  第三に、友好的な学習集団づくりということです。英語は間違いを繰り返しながら身につけていくものです。間違えることを恐れて使うことをためらっていては、英語はなかなか上達しません。安心して失敗できる友好的な雰囲気があってこそ、授業でおこなう種々の活動が学習効果を発揮すると考え、この点については特に注意して指導するようにしています。
  第四に、授業の定型化です。毎回の授業をある一定のパターンに沿って進めることで、生徒は次に何をすればいいか、ある程度予測しながら授業を受けることができます。これが生徒に安心感をもたらします。またこのことは日本語を使わずに英語で授業をする上でも有効です。たとえ指示の中に未習の表現が含まれていても、生徒はいつものパターンから指示の内容を推測し理解することができるからです。
  生徒たちは、本校での6年間はもちろん、卒業してからも英語を学習し続けていきます。どのような出会い方をするかは、その後の関係に大きな影響を及ぼします。中1の生徒たちが、これから長い付き合いになる英語と、良い形で出会うことができるような授業を心がけたいと思っています。

 

授業風景
中学1年 英語の授業風景


中学1年 英語の授業風景