第7回 中学校3年 理科橘 正之先生
       実験を通して法則を学ぶ
    海城の教育を支えているのは先生の力が大きいと思っています。今回は理科の橘先生が登場します。





 橘 正之 先生

プロフィール

昭和44年4月生

中学3年担任

中高物理部顧問

  中高サッカー部顧問

 

校長が見た 海城中学校の理科
 

 中学校の週あたりの授業時数は1・2・3年でそれぞれ3+1・3+1・5時限を充てています。中学校3年では週あたり5時限について、担当者を次のように配置しています。

物理・化学・生物・地学の各科目について各科目の専門の先生がそれぞれ1時限分を担当し、残りの1時限を演習に充て、計で5時限分にになります。橘先生は、中3の物理分野を担当しておられますので、中3各クラスの物理の時間は、週1時間あることになります。

中学3年生にとって、1学期の物理の総時間は、9〜10時間ありました。

 1学期の中で、実験を2回実施しました。1回の実験には実際の実験に1時限、次の時限に実験のグラフ作成及びまとめ等に充てます。このように実験に多くの時間を充てるのには理由があり、それが海城の教育の特徴ともいえます。中学校の時に基礎的な実験から発展・応用的な実験までできるだけ数多く行い、実験をとおして肌で感ずる・体得することを重視しています。中3の1学期のテーマは「運動の表し方、物体の運動について」です。「慣性の法則と運動の法則を体感させる」です。

 

 

 
道具を活用した物理の実験
 

中学校3年になって第1回目の実験は旧来から続いているオ−ソドックスな方法による「記録タイマー」と「力学台車」を用いた実験です。力学台車が記録用のテープを引き出しながら、急な斜面と緩やかな斜面・平面の3種の条件の異なる場面を転がします。一方紙テープが出て行く元の部分に記録タイマーが付いています。先ず平面を転がす場合は台車は一定速度で進みます。すると引き出されたテープには一定間隔のドットが整然と並ぶことになります。(図1@参照)次第に速度が落ちることも読み取れます。これは摩擦等の影響です。次に緩斜面を転がすときは加速度が加わることになります。(図2A参照)次、急斜面の場合に進みます。(図1B参照)以上の3つの場合の実験結果を次の時間にグラフ化します。(図2参照)これによって斜面を転がるときには一定の割合で速度が増加することが読み取れることになります。グラフ化することにより、早さと時間のグラフの意味と、加速度という物理量を確認します。

 第2回目の実験の時間は、上の実験の斜面が最も急になった場合、つまり垂直になった場合にはどうなるかの実験です。これは落下に当たりますから、加速度は、9.8m/ssであり、これをを求めることになります。「ビースピ」とは、数年前に発売されたおもちゃの一つであります。当時、小学生の間で、バネ仕掛けでビー玉を発射するおもちゃ(ビーダマン)が人気であり、その速さを測る装置として、ハドソンから「ビースピ」が発売されました。理科の教員がこれを中学や高校の物理実験装置として使えるのではないかと注目し、実践の結果、精度も十分であり、簡単な速度測定装置として活用できることが分かりました。「ビーダマン」ブームは下火になりましたが、教材として復活しました。1個1,800円ですが生徒実験に活用しました。

 ビースピを使うと金属球が通過したときの速さが瞬時に数字で出ます。生徒にしてみれば、まさにおもちゃのような測定器であり、興味津々です。金属球の落下距離と速さから、グラフの傾き=加速度を求めます。

 

 
 
授業の進め方 理論を体感する喜び

写真1のようにセットした装置で、アクリル製中空ガラス管の中間2カ所に黒色の四角のものがとりつけられています。これが「ビースピ」です。アクリル管の上部から、小・中・大の鉄球(質量・重さがそれぞれ1:4倍:10倍)3個を落とし、それぞれ速さを読み取ります。実験結果の予測は、質量が違っても、速さは3種類とも同じになるはずです。質量の違いに比べて、速度はほぼ同じになることが容易に分かり、生徒は驚きます。運動の法則を自分で確かめたことを知り感動し、それが忘れ得ない記憶に繋がるのだと思います。また、この実験で球の速度を測る位置を変えても、加速度は一定していることを知ります。

実験の様子


1
第1回実験台車の運動(1秒間に50回打点する記録タイマーを使用。5打点ごと(0.1秒ごと)に紙テープを切って貼ったもの) 

2

力学台車が平面を走るときのグラフ(図1@)

3

斜面を走るときの結果のグラフ(図1A)

3

より急な斜面を走るときの結果のグラフ(図1B)

4

図2 上の3つをグラフ化したもの

 

実験1

写真1 第2回実験中の様子(橘先生も写っている)

実験2

写真2 第2回実験中の様子